S邸リノベーション。07「インスペクション実行『概要』。」
ゆうです。
S邸リノベーション計画のほうは着々と進んでおります。
前回のブログでのやりとりの通り、
S様が見つけられた中古物件が
『リノベーションに適している建物であるか』を判断するため、
建物のインスペクションの依頼をS様より受け現地に伺ってきました。
インスペクションをしてもらう直接の依頼先は
このブログでも何度か紹介しているas建築事務所の佐藤さんです。
僕はそのサポートという形で現場に付き添いました。
物件の立地は、東南角地向きで日当たりも視線の抜けも良好。
カーポートや素敵な庭や生垣も付いている。
物件の現在の間取り。事前にS様から資料を頂いていた。
初見の印象はおおむね良好。
ポイントは、
○建物の形状
・総二階なので耐震断熱改修がしやすい(余計なコストがかからない)。
※逆に下屋(二階よりも一階が出ている部分)があるとコストがかかる。
○間取り
・一階と二階の「壁」や「窓」がそろっていて耐震的に大きな問題が少なそう。
→窓がそろっているということは「柱」が上下階でそろっている場合が多い。
柱が上下階でそろっている割合が多いことを『直下率が高い』と言い、
熊本地震ではこの「直下率の低さ」と「倒壊しやすさ」が大きく関わっていたことが明らかになった。
・使い勝手に問題がなさそうである。
→家族4人が住むのに問題なさそうな間取り(一般的な間取り)である。
当該物件は「建売住宅」だったそうで、それもプラスに働きました。
建売住宅は、
・コストパフォーマンスを上げるため、
・大多数の一般的な家族形態に向けた間取りで造るため、
に
構造的にも無理のなく、間取りも一般的なものであることが多いです。
(逆に、個性的なプランの注文住宅が中古で出ているときは注意が必要です。)
しかし、これらはあくまで資料を見ての感想であり、
実際の状況を調査してみないことには確定的なことは言えません。
物件の状態を正確に明らかにするために
中古物件の購入に失敗しないためには、インスペクションは必須項目になります。
インスペクションの道具たち。
インスペクションで調査するポイントは、大きく分けると2つに分けられます。
「重度の問題」と「軽度の問題」です。
これらは、
「その物件を購入したのちにどれほどの工事が必要になってくるのか」
=
「物件の価格+工事費用=予算内か。妥当な金額内か」
を判断する決め手になります。
極端に言えば、格安の中古物件があったとしても、
構造的にボロボロであったり、雨漏りが起きていたりすれば、
安物買いの銭失いになってしまうということです。
雨漏りにより腐りかけている屋根の例。(写真はこちらから拝借)
具体的に言うと
軽度の問題とは、
・壁紙が汚れている、はがれている。
・照明、換気扇が壊れている。
・床が傷ついている。
・外壁の塗装が傷んでいる。
など。
重度の問題とは、
・屋根やバルコニーに雨漏りがある。
・構造体(柱、梁、土台など)が腐朽している。傾いている。
・耐力壁に金物が施工されていない。(地震に十分に耐えることができない)
・基礎にひびが入っている、建物が傾いている。
・基礎に鉄筋が入っていない (←施工不良ではなく時代の問題)
・壁の内部が結露によってカビがはえている。
など。
ざっくりまとめると、
軽度の問題=修復しなくても暮らしていける、修復しても費用負担が少ない。
重度の問題=構造的に問題があり補修しないと地震時にどうなるか保証できない。
=住人の健康を害する恐れがある。
といったところ。
ピンと来た人もいると思いますが、
軽度の問題=プロでなくても見てわかる。
重度の問題=プロの調査がなければ判断できない。
とも言えますね。
これはもっと言うと、
軽度の問題=購入検討者でも見てわかる
=中古住宅を売る前にここを重点的にリフォーム(お化粧)する。
重度の問題=購入検討者ではわからない。
=中古住宅を売る前に直しても効果薄い。
そもそも直そうとすると大きなコストがかかる。
→販売価格が上がる→売れづらくなる→だったら直さない。
ということが多く、中古住宅の質の良し悪しはとても大きな差があります。
(業界内では、重度の問題を見てみないフリをして中古物件を売る業者が増えていることが問題視されてきている。)
話を戻します。
重度な問題が多い場合、
新築と比較したときの、中古リノベーションのコストパフォーマンスはどんどん低くなり、
最終的には、どんなに物件価格が安かったとしても、
「購入+リノベーション」する価値は無し。
という判断になります。
「中古+リノベーション」を考える場合、
購入前に、しっかりとインスペクションをして、
重度の問題がないか(少ないか)を明確にして、
概算でいいのでリノベーション工事費用を見積もってもらい、
「購入価格+工事費用=予算内か、割りにあっているか。」
をしっかりと見極めたうえで、
購入するか、しないかを決める。
家づくりに失敗しないためにはこういった流れが必要になります。
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S様は自分でリノベーションという選択肢を検討され、
自分で物件を探し、
「購入検討の土台に乗る」と判断した後、
自分でインスペクションを依頼されました。
着実に、良いリノベーションの流れに沿っていると思います。
僕はそのお手伝いができて嬉しいです。
さて、
長くなってしまいました。
具体的なインスペクションの内容は、次回に続きます。