【秘訣】板外壁の経年変化。「方位による風合いの違い」
ゆうです。
板外壁の経年変化。「雨の跳ねを考慮する」の続きです。
板外壁は、方位により経年変化に違いが出てきます。
なぜなんでしょうか??
左面(東)と右面(北)で外壁の風合いが異なる築35年の車庫。
方位によって風合いが異なる理由を少し想像してみてください。
(こういう何気ない「気づき」が日常をより豊かにする。)
この車庫は何度が塗装はしていますが、前周一様にしています。
それでも、方位によって風合いが異なってくる。
それは、主に
雨と日射の影響です。
日射(紫外線)により木の成分に分解が起こり、雨が板の表面を洗い流し、
さらに、板に小さなカビが生え初めることで見た目がシルバーグレーになっていくんです。
人間に例えて言えば、
紫外線を浴びて肌が荒れて、
水で流されることで皮脂が流され、常にノーガード状態で痛んでいく。
といったところでしょうか。
ポイントは、表面に栄養や色素がなくなると、きれいなシルバーグレーになって変化が終わるというところ。
板の繊維質はそのままで数十年維持されるということ。
写真はサトウ工務店さんブログより。(退色を見据えた塗装のポイントも書いてあります。)
「日射(紫外線)によるダメージのほうが退色に影響するのかな。」と思ったこともありましたが、そうではなく、雨による影響のほうが大きいです。
紫外線だけなら、杉などの針葉樹系の板はアメ色に変化していきます。
(色が濃くなっていく)
アメ色に変化したヒノキ(無塗装)の床。(変化前はもっと白い)
写真はオーブルデザインブログより。(←本文おすすめ)
なので、シルバーグレーに変化する理由の大部分は、
雨による表面色素を洗い落とす効果と、カビによるものなんですね。
退色とカビがうっすら生えた板外壁。
板と板の間に、元々の木色が残る。
ここまでくれば、方位による風合いの違いの理由がわかりましたね。
簡単に言えば、雨の当たる量(風向き)によって風合いが変わってくるということです。
新潟では北西からの風が多く、北西側の外壁に雨が多く当たります。
そのため、北西側の外壁は色素がまんべんなくあらい流され、一面きれいなシルバーグレー色の外壁になっていることが多いです。
逆に南面や東面は、雨がまばらに当たるため退色はまばらになっていることもあります。
(いずれにせよ経年変化が進んでいけば同じようにシルバーグレーになっていく。)
シルバーグレーに退色された北面(左)と、塗装が残っている西面(右)。
西面の前には雨よけの木が茂っていて雨の当たりが抑えられた結果、塗装が落ちず残っていると考えられる。
板の留め付けは「鉄クギ」。
あえて錆びさせることで板と密着し、長期的に板を固定させる。
(サビ汁跡がつくので好みにもよる)
年数が経ち「うづくり」(年輪の凹凸が出た状態)となった板外壁。
塗装の落ちムラも味となり、風合いに付与する。
ちなみに、カビはどの方位から生え始めるでしょうか。
「日光に当たる南のほうが、なんとなくカビをやっつける効果があって遅いのかなー。」
「日当たりが悪い北面から生え出すんじゃないー?」
と思いませんか?
これ、真逆なんです。
カビは南面から生え始めます。
これは、南面が他の面に比べて日射(紫外線)を受けるため、板の劣化(板自体がもともと持っている防カビ成分の破壊)が進みやすいからです。
(このあたりはオーブルデザインのブログが詳しい。)
「板」一枚とっても、住宅に採用する際に様々な検討をします。
自然素材は近年流行していますが、使用する際には、経年変化・劣化を考慮して、未然に軽減できるよう設計する必要があります。
おまけ................
我が家には板外壁の「蔵」もあります。
ほどよく退色が進んだ我が家の蔵。(北面)
板壁と黒瓦の田舎の家(特に日本海側)の外観。これが街並みの風景をつくる。
蔵や家の西側には屋敷森がある。
先祖が植えてくれた杉林により、冬の北風や夏の西日が軽減される。感謝。
おまけのおまけ................
現在、板の経年変化を実験中。
左の二枚が国産の杉板、右が北米産のウエスタンレッドシダー。
天に向けて置くことで、雨や日射をより当てて劣化を促進させている。
どうなることか。
何事も「興味」と「実験」と「考察」から。
特に住宅のような様々な要素が絡み合うものには複合的な知識と判断が必要になる。
田舎暮らしはそのための経験づくりがたくさん♪