原惣右エ門工房の斑紫銅 at 柏崎。『唯一無二の表札プロジェクト。』

【素材・職人技】の物語

ゆうです^^

数年前から伺いたいと考えていた場所へようやく伺うことが出来ました。

約500年前から続く伝統的な鋳物工房であり『斑紫銅』製品を製作されている
原惣右エ門工房さんです。

画像は原惣右エ門工房HPより。

原惣右エ門工房さんは、柏崎で約500年以上続く鋳物工房です。

元々は鍋などの日用品や塩釜やお寺の鐘などを作られていたそうですが、
江戸末期から日本の伝統的な『蝋型鋳物』で現在のような工芸品製作に移られたそうです。

「鋳込み」時に立ち合わせて頂く約束を先日電話でさせて頂いた。
しかし、挨拶にと(待ちきれず)伺ってきた。

1978年には新潟県の無形文化財に指定されており、柏崎市の案内看板も立っていた。

植栽で整えられたアプローチ。とても素敵で建築心をくすぐる^^
奥に工房が見える。

(画像はHPより)

『蝋型鋳造』とは、蝋(ロウ)の特性を生かした鋳造技法のひとつ。
日本では奈良時代からの仏像の製作などで広く利用されてきた。

①蝋(蜜蝋と松脂の混合物)で原型(製作物の完成形をしたもの)を作り、その周りを特殊調合した土で覆い乾燥させる。

②土ごと焼き、蝋の原型を溶かし出すと鋳型が出来る。
(周囲の土も焼き締めにより固まる。)

③出来た鋳型に溶かした金属を流し込み、冷めるのを待ち鋳型を割って金属を取り出す。

④原型の形をした金属が完成する。

シルバーアクセサリーの製造方法を教えてもらったのを思い出しますね^^
新潟観光大使。36『ジュエリー工房「ひなたぼっこ」 in 豊栄。』

蝋型鋳造の優れた点は

・細工がしやすく、複雑で繊細な様々な形の鋳物を作ることが出来ること。

・金属を彫って作る「彫金」と違い、蝋型鋳造は柔らかい風合いを表現できること。

繊細な唐草模様のオブジェ。とても鋳造とは思えない。(すごい)

蝶の置物。彫金とは違った「柔らかい」質感が移し出されている。
(蝶の羽の模様は彫ったのではなく鋳造によるもの。)

原惣右エ門工房さんのHPには

「原型も鋳型も残らない鋳造法ですが、そうして生まれたものはいくつもの時代を超えてこの世界を彩り続けます。」




「それらの鋳物は量産ができません。だからこそ、全ての製品に私たち作り手は強い思いを込めることができます。」

と書かれています。

量産が出来ない手仕事で作られたまさに一品ですね。

窓辺に置かれた「斑紫銅」の花器。

原惣右エ門工房さんの大きな特徴に「斑紫銅」が上げられます。

『斑紫銅(はんしどう)とは紫や赤の斑紋をまとった銅のこと。

磨き工程が済んだものを再度変形寸前の温度になるまで焼き上げ、赤や紫色の酸化皮膜を定着させる伝統技法。

炎が生み出すその斑紋はひとつとして同じものはない。

火の温度を読み、熟練の技で独特の斑紫模様を生み出されている。

5代目の原聡さんと奥様にいろいろなお話をお聞きすることが出来ました^^

「工芸品だけでなく、取っ手など建築により近い製品も製作していきたい。」

「製品にはクリア塗装などはしてない。経年変化の美しさを感じてもらいたい。」

「海外のデザイナーとのコラボなど前衛的な取り組みも行っている。」

「記念品としての需要、寺など公共の注文などは減った。これからは『個人のこだわり』のためになる製品を生み出していきたい。」

「元々個人のための製品を作ってきた歴史がある(江戸時代から)。そう考えると原点に戻ってきているのかもしれない。」

など。

海外のデザイナーとコラボして製作したアートオブジェ「Dancing Flames」。

5代目の原聡さんが代表としての役割をされ始めてから約10年ほど経ったそうで

「もっと地元の建築士の方と一緒になにかを作っていきたい。」

という思いを話してくださいました。

上記のお話も含めてそれは、僕が考える思いと驚くほど似ていました。

「早く一緒になにかを作ってみたい。」

と僕もワクワクしました。

現在思いついているのが『表札』です。

フレームの形状、書体、サイズなど全てオーダー可能な唯一無二の表札。
銅は経年変化で青みがかってくる(緑青)のもとても味わいがあって良い。

「世界でひとつだけの新築住宅が完成したときに、世界でひとつだけの表札を掲げる。」

とても素敵ですね。
その表札に「想い」や「歴史」や「手仕事感」があればなおさらです。

今まで何点も表札は作られているそうだが、県内ではまだ数が少ないそう。
いずれは原惣右衛門さんの表札をエスネルデザインで勧めていきたい。

その他としては「取っ手」関係ですね。

すでに取っ手に応用できるサンプル(オブジェ)は製作されていた。
取っ手を依頼できるとは思ってもいなかった。
挨拶に伺ってお話が聞けたからこその案。
この「可能性」はいつか実現させたい。

柏崎で500年以上続く鋳物文化を未来へとつなぐ一旦を担うことが出来るならば、設計者としてもいち柏崎市民としてもとても幸せなこと。

建築の持つ力と合わせて「文化をつなぐ」提案をしてきたいと考えています。

様々な花器たち。同じ斑紋は二つとない。
黒みがかったものは松葉で燻して黒く仕上げている。

差し当たり今度の「鋳込み」を見学させて頂くのがとても楽しみです^^

原さん、訪問させて頂き誠にありがとうございました!

今後とも宜しくお願いいたします。

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村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

最近できた目標
:自邸を建て、斑紫銅の表札の製作を依頼すること。

おまけ................
原酒造さんの屋号は「なべや」。
元々は鍋を作る鋳物屋さんだったんだそうです^^

紹介!................

鈴木亮平さんが運営される「新潟モノ物語」でも原惣右エ門工房さんのことが紹介されています♪
内容がわかりやすく面白いです^^!

炎が生み出す美 "斑紫銅"の技を継承する柏崎の鋳物師

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