【秘訣】2018年の積雪から構造を考える。「雪庇・カーポート」

【構造・耐震性】の秘訣

ゆうです。

「積雪から構造を考える」シリーズの③です。

 →2018年の積雪から構造を考える。「設計積雪量」①
 →2018年の積雪から構造を考える。「設計積雪量」②

雪庇(せっぴ)やカーポートなどについてまとめてみます。

大きく屋根からはみ出した雪庇(2/8三条市)。とても危険だった。

翌朝には落下していた。
通行者(人・車)がいたときに落ちていれば被害が出ただろう。

当該屋根(下側。後日撮影)
(2階の屋根には雪止めアングルがついている。)

ここまで雪庇が大きく危険になったのには原因があります。

雪止めアングルが設置されていなかったため雪庇が軒先に貯まった。
 (屋根に積もった雪が軒先へずりずりと押し出すように雪が動いた。)

屋根の勾配がゆるく、定期的な落雪が起きず雪庇が巨大化した。
 (勾配があれば軒先の雪は定期的に落ちた。)

屋根が古くサビもあったため、雪の落雪が起きづらかった。
 (すべりが悪く、ほどよい摩擦があり雪が屋根上にとどまった。)

通常、住宅の屋根には「雪止めアングル」を設置しますが、その際にも注意が必要です。

例えば、

ゆるい屋根勾配で、

軒の出が長く(軒先きから雪留めアングルまでが長い)

大雪の年

だった場合、大きな雪庇が出来る可能性があります。

雪庇が大きくなると、

・落下する際に雨どいを巻き込んで落ち、雨どいを壊す。

落下した先に、車や人や1階の屋根、隣地のフェンスなどがあった場合、被害が出る。

こういったことを避けるため、

雪止めアングルの位置

軒の出の長さ

などは「家を建てる立地」や「隣地との間隔」等を加味して慎重に検討する必要があります。

................

続いて「カーポート」について。

先日、S邸の現地調査に訪れた。

師匠からは「その土地の一番厳しい季節、外部条件を考慮して設計しろ。」と教わった。
「写真や想像では必ず想定不足が起きる。」
「厳しい時期に自分が現地へ行き、体感することが設計者として必須事項だ。」

そして(想定していたことではあったのですが)カーポートで「あること」が起きていました。

想定以上の積雪により屋根の梁がゆがんでいた。

ここまでゆがむと雪を撤去してももう戻らない。
(作業が危険なため、雪下ろしをすることも出来ない。)

新潟市では、S邸のように透明なポリカーボネート屋根のカーポートをよく見ます。

多量の積雪があることを想定していないためだと思われます。

このようなカーポートの耐積雪は0~20cmほどです。

リクシルの「ネスカR」耐積雪は20cm相当。

仮に10年に一度大雪があると考えたとしても、10年に一度壊れるようなカーポートは選びませんよね。

僕は下記のような折半屋根のカーポートを通常提案しています。

選定のポイントはあくまでデザインよりもまずは「機能(安全性)」。
そして、安全であることは被害の確率を下げ修繕コストの発生リスクも下げる。

みなさんは今回の大雪で「家」になにを感じられたでしょうか。

僕もですが、人間、春が来ると厳しかった冬のことは忘れてしまうものです。

だからこそ、厳しい冬にリアルタイムで考えることが大切になります。

そして、忘れてしまっても見返しておけるようにメモなどに残しておくと良いと思います。

おまけ................

現在の事務所(3階)からの風景。
曇りの日は遠くまで見通せないが、、、

晴れた日には雪化粧した『粟ヶ岳』が姿を現す。
空気が澄んでいる2、3月が一年で一番きれいに見える。
冬は大変なことも多いが、その分感動することもとても多い。

人間は「ギャップ」に心を動かされる。

この感動があるから雪国暮らしはやめられない。

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