ケンチク探訪♪ 31『白根の笹川邸。』経年変化と日本建築。
ゆうです^^
初夏の頃に白根の笹川邸を訪れました。
豪農の館は、自然素材の使い方の他にも、空間の取り方や自然の冷暖房などが学べ、とても参考になる。
そして、なにより「癒し」や「大切なもの」を思い出させてくれる。
笹川邸から多くのものを学ばせて頂きました。
米所新潟には、歴史ある豪農の館が今も残っている。
それぞれの館から、構造材の使い方や、積雪対策、自然素材の劣化防止、絢爛な細工など、多くを学ばせてもらっている。
価値ある建築の残る新潟に暮らしていることに、とても幸運を感じる。
新潟の歴史ある館はこの資料がとても分かりやすい。
(役所などで手に入る)
椿寿荘や齋藤家別邸は特に好きな建築。
行かれたことのない方にはぜひお勧め♪
豪農の館 旧田巻邸 「椿寿荘」|施設マップ|観光のご案内|田上町
旧齋藤家別邸 - The Niigata Saito Villa
今回は訪れたことのない「笹川邸(旧笹川家住宅)」へ。
初夏の空に茅葺き屋根が映える。
南区HPより................
笹川家は14代300年にわたり続いた名家です。
江戸時代には、8か村を束ねる大庄屋を代々務めていました。
周囲に堀をめぐらせた広大な敷地の中には、1573~1591年に建てられたと伝わる茅葺きの表門、1826年に再建された威厳ある表座敷は大庄屋の格式をよく示しています。
県下を代表するこの住宅は、1954年に重要文化財の指定を受けています。
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周囲に堀が巡らされた敷地。
ちょうど七夕の時期で飾りで彩られていた。
表門からは、天皇など高貴な方のための正門と、一般用の裏口に道が分かれる。
裏口への道は石敷き。
牛や荷車が行き来したのだろうと想像が膨らむ。
森と塀に囲まれたアプローチ。
裏口はすぐに土間の炊事場へ。
「土間」という半屋内-半屋外空間。
そこに昔の民家の居心地の秘密がある。
(夏の涼を取る工夫も)
光の絞られた室内から外を臨む。
正にピクチャーウィンドウ。
囲炉裏の間。
囲炉裏は、煮炊き、暖取り、そして防虫など、幾重もの役割を担っていた。
地面近くの苔むしている杉板。
(雨どい無し)
本物の経年変化(劣化)から学べることは非常に大きく、ありがたい。
自然素材を使う設計士はこういった知見を重ねていく必要がある。
畳の大広間。
建具で仕切られた典型的な田の字プラン。
壁がなく、細い柱と梁で空間が構成されている。
これが海外の建築家が憧れた日本建築。
笹川邸プラン。
居室がとても多く、それぞれに採光を確保するための工夫(中庭など)が伺える。
また、土間(炊事場)から各居室へ裏の廊下からアクセスできるよう工夫がなされている。
築400年以上建つ茅葺きの表門。
居室の外には外廊下が、そしてさらに外には縁側がある。
空間のグラデーションが建築の奥行きを深める。
季節も良く、縁側はとても気持ち良かった。
「超高断熱+全館連続空調」 と真逆の建築でいろいろと刺激を受ける。
開放的で、内外の一体感があり、とても良い。
こういう建築を見ていると、ついつい住宅に採用したくなる。
しかし、中途半端にかいつまんで採用すると、どっちつかずの半端な建築になってしまう。
(建築的な心地良さ・空調など)
物事にはメリハリ、取捨選択が大切。
「三つ巴」の釘隠し。
深い屋根(軒)が夏の直射を遮ってくれる。
また、雨がかりを防ぎ、木製戸の劣化を抑えてくれる。
外観を整える効果もある。
デザインの意味を知り、採用する意味・効果があるもの、ないものを理解した上で、住宅設計に活かしていきたい。
トイレの壁天井は漆喰塗り。
光の反射や広がりがしっとりとして感動した。
壁天井の質感は、建物の印象(質)に大きく影響する。
風合いとメンテナンスしやすさ、コストなどバランスを考慮した提案を心掛けたい。
(エスネルデザイン標準はAEP塗装)
笹川邸からは「奥行き」感を特に感じた。
廊下や建具により、外と中が緩やかにつながる。
いつから設置されたのかは不明だが、ガラス戸も。
建具により、縁側空間は「内」にも「外」にも可変する。
「This is Japanese Architecture.」
と海外に伝えたいような風景。
柱と梁、畳と板の間、紙障子と繊細な格子、そして外の緑と光。
多くの言葉は要らないだろう。
屋敷の一番奥にある蔵。
外は暑くとも、内部はとても涼しい。
地中冷熱利用の有効性を体感できた。
閉館が近づき、障子が閉じられていった。
(開と閉のどちらも体感できてとても幸運)
閉の空間。
この可変性が日本建築。
雨が多く、高温多湿であることなど、建築は風土から作り出される。
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笹川邸、とても刺激的で勉強させられました。
そして、癒しをもらいました。
ありがとう。
いつかまた来ます。
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村松 悠一 一級建築士
エスネルデザイン代表
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