【秘訣】冷暖房費シミュレーションと実測値の差。『実測検証の意義。』机上の空論で終わらせない。
ゆうです^ ^
先日、網川原のエスネルの実測冷暖房費についてまとめました。
冷暖房費は設計時にシミュレーションを行っていたのですがどれほどの差があったのでしょうか。
また、シミュレーションソフトによってどれほどの差が生まれるのでしょうか。
検証しました。
網川原のエスネルの実測光熱費については下の記事をご覧ください^ ^
超高断熱の『経済的メリット』が伝わるかと思います。
(メリットは他にも多々あります)
【秘訣】『超高断熱の小さな家の光熱費。』-網川原のエスネル実測値紹介-【蓄熱床下暖房】 - 住宅設計エスネルデザイン
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冷暖房費のシミュレーションは簡単ではありません。
「断熱性能、家の大きさ、外気温、冷暖房設定温度、室内の発熱量、カーテンのありなし」など、パラメーターは非常に多く
中でも
・日射熱の量(夏場は冷房負荷、冬場は暖房補助)
・エアコンの効率(外気温、設定温度により変化)
・床下エアコンの基礎からの熱損失(熱伝導)
は最新のシミュレーションソフトでも正確に把握することは困難。
そこは『経験に基づく設計者の勘』によって調整する必要があります。
設計事務所の仕事『冷暖房費・光熱費シミュレーション作成。』 - 住宅設計エスネルデザイン
網川原のエスネルの設計時の冷暖房費シミュレーションは下記のもの。
(上記ブログ記事のもの)
シミュレーション計算のポイントは
・「一次エネルギー消費量計算WEBプログラム(公的なもの)」で計算。
・エアコンの効率低下を考慮。
・床下エアコンの基礎からの熱損失を考慮。
・冬場、日射熱は有効活用できないことを前提。
(曇りが多い。隣家による影。カーテン閉など)
・安全率1.2(想定の120%程となるよう調整)
【計算詳細】................
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では実測値と比較して差はどれほどだったのでしょうか。
(それぞれ基本使用料・再エネ賦課金・燃料調整費は含んでいない)
【赤】が実測値。
(従量電灯換算値(実際は深夜電力利用のためもっと低い))
【ピンク】がエスネルシミュレーション。
(上記説明のもの)
【水色】が高性能シミュレーションソフト。
(ホームズ君「室温動的熱負荷計算」)
※実測年は積雪ゼロの暖冬だったことに留意。
(暖房負荷が少ない。エアコンの効率が下がりにくい)
【考察(対エスネルシミュレーション)】
暖房費の実測値との乖離がある。
〈要因〉
・実測(前期)は暖冬。
(今期は前年比で1月の暖房費が128%だったとの報告あり)
・シミュは安全率を考慮(想定の120%)
・実測は日射熱の影響あり(夏場は負荷。冬場は補助)。シミュは日射考慮なし。
・電気料単価の差(実測値から割り返すと約25円/kWh(基本使用料等除く)だった。シミュは27円/kWhで計算)
上記を考慮してシミュレーションを調整してみる。
【考察】
〈暖房〉................
・調整後シミュレーション値は調整後実測値に近接した。
→シミュレーションの方向性(調整具合)は悪くないことが確認できた。
・暖房はシミュ値より実測値のほうが少ない。
→日射熱が活用できたことが伺える。
〈冷房〉................
・シミュ値より実測値のほうが大きい。
→日射熱による冷房負荷が伺える。
(K様いわく「日中あまり遮熱ロールスクリーンは下げなかった」)
・エアコンの除湿運転を積極的にONされていた→冷房負荷増。
(梅雨~夏:基礎からの水分蒸発→高湿に留意)
【まとめ】................
・断熱性能や設備による冷暖房費への影響は概ね想定通りだった^ ^
・今後はより『冬場の日射熱取得』『夏場の日射遮蔽』を意識した設計を行っていく。
(屋根の出、窓の量、遮熱カーテン、植栽による日陰効果、、)
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シミュレーション②(ホームズ君「室温動的熱負荷計算」)と実測値の差について。
※毎時毎の冷暖房負荷、室温変化などを反映して精細なシミュレーションが行えるもの。
(自動計算が多くどのような計算がされているか、式が現実に対して適当かどうか等を掴み切ることが難しい一面もある)
【赤】が実測値。
【水色】がホームズ君「室温動的熱負荷計算」。
ホームズ君シミュ結果も実測値と乖離がある。
(しかも冷暖房費が少なくなるほうに△)
【ホームズ君シミュ詳細】................
・冬場の日射熱取得の過大評価を抑えるため『冬場日中はシャッターあり』を選択。
・電気料単価は27円/kWhで計算。
・エアコン効率(COP)の変動はソフトの自動計算に任せた。
(おそらく十分でないか)
(COP変動はメーカー非公開情報のため検討も難しい)
【考察】
実測値とホームズ君シミュの乖離の要因(※推測)
〈暖房〉................
・床下エアコンの基礎からの熱ロスが過小評価。
・日射熱の過大評価
(特に日射の少ない日本海側気候の場合)
・エアコン効率の低下の過小評価。
〈冷房〉................
・潜熱負荷の過小評価。
(外気からの湿気、人体からの湿気の除去負荷)
・日射熱(直射、全天)の過小評価。
・夜間外気による冷房補助効果の過大評価。
(※全て推測)
以上です。
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大切なことは「実測に近いシミュレーションを算出すること」ではなく
「実測とシミュレーションの差がなぜ発生しているのか」を知っていること。
=「なにをどのように改善すればより良くなるかが分かる」ということ。
(ex.断熱性能、空調方式、コストパフォーマンス、日射遮蔽取得のバランス、エアコン選定、、)
ひとつとして同じ条件の建物はない。
(形状、性能、立地、隣家、暮らし方など)
また近年、外気温や日射量など自然環境も大きく変化してきている。
(猛暑、ゼロ積雪、豪雪、、)
各パラメーターの影響度を把握し切ることは非常に難しい。
しかし、ある程度の感覚は掴みたい。
それにはシミュレーションと実測、検討と検証の繰り返しが必要になる。
なぜそこまで行うのか。
その先に『支出を減らす』『快適性の向上』『環境負荷低減』が叶えられる住宅の実現があるから。
-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-