ケンチク探訪♪ 33『「桂の平屋」見学(大平木工さん)』風景を取り込む木製引戸の魅力。
ゆうです^^
先日、住学番外編で大平木工さんの桂の平屋を見学させて頂きました。
立地環境・景観が素晴らしく、木製引戸がそれを室内に取り込む。
「与えられた環境を活かす」設計に、とても大きな感動を覚えました。
大平木工さんの建築は大地の芸術祭の香港ハウスに続いて2軒目。
あのとき受けた刺激がよみがえります^^
1年前に住学で訪れた香港ハウス。
香港のデザイナーと大平さんの共同設計で建築された。
ケンチク探訪♪ 16&新潟観光大使。53『香港ハウス見学 at 大地の芸術祭2018!』
大平木工さんHPより。
大平木工さんは津南にあり豪雪地の設計を熟知されています。
もし豪雪地に家を建てるのであれば、豪雪地の設計士に依頼したいもの。
屋根の勾配、設備の設置位置、雨どいなど、雪の苦労を知っている当事者ならではの設計配慮がこらされているから。
「桂の平屋」は十日町。
秋晴れの気持ち良い日だった。
豪雪地の建築は見ているだけで勉強になり面白い。
自然に対し無理のない設計を行うことを学ばされる。
経年変化した杉板外壁の家々がとても凛々しい。
桂の平屋に到着♪
青い空に群青の外壁が映える。
テレビアンテナの高さから積雪量が伺える。
(豪雪地、恐るべし)
見学は住学メンバーで。
大勢で見ると様々な角度からの意見・感想が共有できとても参考になる。
小さな平屋のスケール感が素敵。
サイズも形も自然と調和していて気持ち良い^^
室外機や給湯器は屋根の下・奥に設置される。
これも豪雪地の工夫。
積雪や吹き込みを防ぐために「閉じる」と、
室外機の効率を下げないように「開く」のバランスが求められる部分。
そのバランスは設計者の経験によるところが大きい。
玄関ポーチ。
全面杉板張り+クリア防腐塗装。
天井と壁の間の隙間(目透かし)が綺麗。
そして、玄関戸は造作!
大平さんの「設計熱」が感じられる部分^^
そして、玄関を開けると、、、
どーーん!!
田園+山々+空の景色が広がる。
人工物はほぼ見えない。
最高のロケーション。
別荘のよう。
(羨ましい、、)
サッシは木製造作。
錠もシンプルで格好良い。
よく見てみると、引戸の上下の枠が見えない!
外から見た様子。
室内から枠が見えなかった理由は「枠の分レールを下げているから」。
これは「隠し框」と呼ばれる建築手法^^
網川原のエスネルでも「隠し框」を使っている。
サッシの存在感が薄れ、内外が一体化する。
こういったディテールの積み重ねで感動する空間は生み出される。
【秘訣】家を広く使う秘訣は「複数の居場所を設ける」こと。-case.網川原のエスネル-
住学メンバーもいろいろと興味津々。
大平さん、お誘いありがとうございました♪
リビングと連続しつつ、程よく閉じられたキッチン。
造作洗面台。
設備の選定やタイル、コンセントの種類・設置などにセンスが光る。
そして、素晴らしいディテールを発見しました!
引戸の引手に注目!
こ、これは!!
明かり取りライン引手!!
「大平さん、これはまさか、、」
と伺うと、
「村松さんの設計から参考にさせて頂きました。」
と!!
こんなに嬉しいことはありません^^
親戚に子供が生まれたような?
なんというか「身内感」を感じ、とても暖かい気持ちになりました♪
明かり取りライン引手の詳細図。
どなたでも気軽に利用して頂ければ幸いです。
【網川原のエスネル‐36】造作建具製作!手掛けと明かり取りのデザイン。
サトウ工務店の佐藤さんも
「詳細を人から褒められるととても幸せを感じる。」
とおっしゃられていました。
そのあたりはこの本↓に詳しく書かれています^^
ケンチク探訪♪ 32『「寺泊の住宅」見学(サトウ工務店さん)』「デザイン納まり図鑑」発売!
なんと言ってもこの場所が最高の贅沢であり御馳走。
惚れ惚れして長時間滞在してしまった。
引戸を開け放ち、外と中が一体化した心地良さは写真や文章では伝えきれない。
しかし、誰しも経験したことはあると思う。
「こんな素敵な場所で暮らせたらな。」
と思いにふける。
これだけ素敵な体験すると、ついつい「設計に取り入れたい」という欲が出てくる。
しかし、注意しなければならないのは、大開口引戸がこれだけ有効に働く条件はシビアだということ。
・景観が素晴らしいこと。
(隣家までの距離があること。素敵な自然・庭があること。)
・周囲の人から見られる心配が少ないこと。
(隣家の窓などがあると心の開放感は減少してしまう)
また、
・開放して気持ち良い季節は春と秋の日中の短時間であること。
・引戸の気密性に対するケア。
なども考慮に入れる必要がある。
ここまで素晴らしいロケーションはそうそうない。
条件を考慮せず安直に設計に取り入れないよう注意したい。
また、エスネルデザインでは「空間のアウトソーシング」という考え方を提唱している。
限られた予算、条件の中で「内外の連続による心地良さ」は外へ委託するという選択肢もあり。と考えると少し気が楽になるかもしれない。
しかし、大開口引戸で内外が連続した空間には理屈を超えた心地良さがある。
「気密性」「コスト」などを吹き飛ばす魅力がある。
そこで設計士は揺れる。
それが心苦しく、またそれがとても愉しい。
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大平さん、見学させて頂きありがとうございました^^
とても心地良くて「引戸の魅力」を再認識しました。
明かり取りライン引手も採用ありがとうございます♪
今後とも何卒宜しくお願い致します。
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村松 悠一 一級建築士
エスネルデザイン代表
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