【構造】『地震地域係数Z=1.0の構造計算の標準化。』-耐震性能の割引の是非、家を守るのは誰か-
こんにちは^ ^
エスネルデザインは2020年から
『地震地域係数Z=1.0での構造計算を標準化』
しています。(耐震等級3)
「地震地域係数ってなに?」
「1.0?他になにがあるの?」
「なにがどう違うの?」
内容をまとめました。
エスネルデザインは耐震性の高い家=『倒壊防止性能を超えた損傷抑制性能』の高い家を設計しています。
その理由は僕の実家が被災した経験があるから。
災害直後の生活、復旧費用、不安、、、
様々な被害がありました。
「これから家を建てるのであればより安全で安心な家が欲しい。」
心からそう感じています。
また世の中の家が全てそうなれば良いと考えています。(→減災)
詳細は過去の記事をご覧ください。
『中越沖地震から10年』家を建てる上で最も大切なこと。 - 住宅設計エスネルデザイン
『中越沖地震から12年。』家を建てる上で最も大切なこと。 - 住宅設計エスネルデザイン
熊本地震から2年。『耐震性』を今一度考える。 - 住宅設計エスネルデザイン
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さて
『地震地域係数Z=1.0での構造計算を標準化』
とはどういう意味か。
要約すると
『必要な耐震性能を割り引かない構造計算を行っている』ということです。
(許容応力度計算)
・新潟県の家の場合、一般的な計算(Z=0.9)よりも耐震性が約10%高い家を設計している。
・「必要耐震性」>「地震力=建物の重さ×地震地域係数Z(割引ありなし)×その他係数」。
順を追って説明します^ ^
【要点】
・現在の建築基準法では「地震の頻度が低い地域は必要な耐震性能を低減して計算しても良い。」というルールになっている。
・地震地域係数Zは0.7~1.0で定められている。
(=地震が多い地域は1.0、地震が少ない地域は0.7)
(=必要耐震性を70%~100%に低減して計算して良い)
・地震地域係数Zは各地の過去の地震記録に基づいて国土交通大臣が定めている。
地震地域係数を示したマップをご覧頂くとスムーズです。
下記の耐震設計さんページ「その耐震基準で大丈夫か。地域係数とは何か」が分かりやすいです^ ^
(このブログを読み進める前に一度見てみてください)
その耐震基準で大丈夫か。地域係数とは何か | 株式会社 耐震設計
マップを見ると概ね「太平洋側:Z=1.0、日本海側:Z=0.8~0.9」となっていますね。
この地震地域係数は1979 年に定められたものです。
( 昭和 53 年建設省告示第 1321 号 )
ここで問題提起です。
「地震地域係数は現在の実情にあっているのか?」
「Z=0.7~0.9の地域の地震は本当に少ないのか?」
「必要な地震力を低減して計算して良いのか?」
地震地域係数については以下の疑問点が挙げられています。
・過去の地震記録が資料として残っていない地域(≒地方)の実情が十分に反映されていない可能性がある。
・繰り返し発生する海溝型の地震が重視され、発生間隔が千年を超える活断層地震は十分に反映されていない可能性がある。
実際に近年の大地震の発生地と地震地域係数には乖離が見られます。
〈近年の震度7の地震〉
中越地震(2004年)新潟県:Z=0.9エリア
熊本地震(2016年)市役所が大きな被害を受けた熊本県宇土市:Z=0.8エリア
北海道胆振東部地震(2018年)厚真町:Z=0.9エリア
また、南海トラフ地震の中心被災エリアである四国はその大半がZ=0.9エリアです。
(反対に、静岡県では南海トラフ地震対策として「Z=1.2とする独自基準を義務化」する条例を定めています(2017年))
僕が住む新潟県はZ=0.9のエリアです。
Z=0.9とは「Z=1.0のエリアに比べて地震発生の頻度が低いから必要な耐震性を10%低減して構造計算しても良いよ。」という意味。
新潟県ではZ=0.9で構造計算を行うケースが多いと思われます。
「ただでさえ雪の重さによって必要な耐震性が増えるのでZ=0.9で低減して少しでも設計を楽にしたい」という設計者の気持ちがあります。
(必要な耐震性が低い=窓の量を増やしやすい、壁の直下率が低くてもクリアしやすい、床が弱くてもクリアしやすい等)
※雪の重さを加味している分、非積雪地のZ=0.9の建物よりは耐震性は高くなる。
(雪が乗っていない状態の場合)
※雪の重さによる必要耐震性増加分もZによって割り引かれるため非積雪地に比べるとZの割引による影響(割引量)は大きい。
※そもそも構造計算を行っていない建物にはZの適用がないため耐震性の割引は考慮されていない。
【補足】................
・「必要な耐震性はどの程度か」について明確な答えを出すことは難しい。
(今後どのような地震が来るか、建物が建っている間に来るかは不明のため)
(積雪時に地震が来る確率の低さをどう捉えるかによっても変わる)
(生命保険のリスクとリターンをどう考えるかに似ている)
・Zの検討よりも「許容応力度計算を行っていること」「耐震等級3で計算していること」のほうが重要。
耐震性の高い家づくりはまずはそこから。上記の先にZの検討が来る。
(エスネルデザインでは全棟耐震等級3で構造計算を行っている)
(理由は震度7の地震が2回連続で来た熊本地震で耐震等級3の家の被害が少なかったから)
(「一度被災したら次の地震に耐えられるか不明(≒家の価値はほぼゼロ)」という家は建てたくない)
・構造計算だけでなく「工事監理によって計算の通りに施工されていることを確認すること」も重要。
【秘訣】構造計算された家を。「耐震等級3」を勧める理由。 - 住宅設計エスネルデザイン
【網川原のエスネル‐23】耐力壁の工事監理!「耐震設計の基本・監理のポイント・モイスの防火性能。」 - 住宅設計エスネルデザイン
〈補足続き〉................
・耐震性能の向上に高額な追加コストはかからない。
耐震性を上げられるかどうかはざっくり言えば「設計者の構造設計の腕」にかかっている。
「構造を考えたプランニングがなされているか。」
「間取りを考えた人に構造計算の知識があるか。」
等がポイントになる。
【まとめ】................
エスネルデザインでは現在
『許容応力度計算で耐震等級3』
(被災時の損傷抑制性能)
『地震地域係数Z=1.0』
(必要な耐震性能の割引は行わない)
『積雪量を必要以上に割り引かない』
(雪下ろしをすることによる過度な積雪量低減を行わない)
を標準化して家の構造設計を行っています。
(eLXグレード)
『地震に強い家を建てる。』
それは
被災後に自分の家で暮らし続けられる可能性を高めること。
(→家族の安全安心な暮らしの維持)
これから起こる災害被害を低減すること。
(→必要性の高い場所に人や資源を回せる)
家が資産となること。
(→売却の選択肢。人生の自由度の向上)
長く安全に暮らせる世の中を造ること。
(→次世代の住まいを想像する)
「住まい手」が「設計者」が「施工会社」が「自分たちで調べ、考え、選ぶ」ことが求められている。
-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-