【秘訣】夏の日射遮蔽『アウターシェード有無の冷房費比較』西日の特性と注意点。-欠点を抑え利点を伸ばす-

【日射遮蔽・日射取得】の秘訣

こんにちは^ ^

現在、日射遮蔽(夏)と日射取得(冬)のバランスの検討を進めています。

夏の窓から入る直射熱の不快感を抑えたい。

アウターシェード有無による冷房費の差比較。

西日の特性と注意点。

アウターシェードの経済効果、適する場合とそうでない場合についてまとめました。

『欠点を抑え利点を伸ばす設計』を行いたいという思いがあります。

 

 

 

前回、アウターシェードの要不要について手間-効果-コストの包括検討を行いました^ ^

 

【秘訣】夏の日射遮蔽『アウターシェード要不要。』手間-効果-コストの包括検討。-労の少ない暮らし- - 住宅設計エスネルデザイン

 

 

今回は上記事の補足になります。

アウターシェードのありなしでどれほど冷房費の差が出るのか。

手間とコストをかける価値はあるか。

検討結果を紹介します。

 

まず『日射熱取得率』から。


窓は遮蔽型トリプルガラスとして

〇アウターシェードありの場合、日射熱は9%(約1割)に抑えられる。

〇アウターシェードなし+内ロールスクリーンありの場合、日射熱は21%(約2割)に抑えられる。

〇アウターシェードなし+内ロールスクリーンなしの場合、日射熱は47%(約5割)に抑えられる。

感想としては

「アウターシェードありだと日射熱をかなり抑えることが出来る。」

「アウターシェードがなくても内ロールスクリーンがあれば概ね日射熱を抑えることが出来る。」

「どちらもなしだと日射熱がそこそこ入ってくる(ただしガラスの反射で約半分には減らせる)。」

というところ。

 

これを基にそれぞれの冷房費を算出しました。

それぞれの冷房費/月は

〇アウターシェードありの場合、冷房費=約160円。

〇アウターシェードなし+内ロールスクリーンありの場合、冷房費=約360円。

〇アウターシェードなし+内ロールスクリーンなしの場合、冷房費=約790円。

額を見ての感想は

「アウターシェードありとアウターシェードなし+内ロールスクリーンありの差は大きくはない(約200円/月)。」

「どちらもなしだとそこそこ冷房費がかかる→注意して設計を行いたい。」

というところ。

アウターシェードは設置や上げ下げにコストがかかる。

この結果を見ると

「アウターシェードは経済性(冷房費低減)を目的とするものではない」と言える。

アウターシェードの主目的は

「窓辺の暑さを軽減するため(=放射熱を抑え窓辺の快適性を上げるため)」。

詳細は↓記事をご覧ください^ ^

 

【サーモ】夏の日射遮蔽検討『アウターシェード有無、ハニカム-レース-無しの温度差と暑さ体感。』 - 住宅設計エスネルデザイン

 

 


〈再掲載〉

【備考説明】................

■上記は窓(幅1.5m×高さ1m)3個の場合。
(リビング南面を想定)
→もっと窓が多い場合は冷房費は大きくなる。
(実際は東西北にも窓があることを考慮。※それぞれ日射時間は異なる)

■上記計算の「日射量500W/m2」は南面のピーク日射量(12:00頃)。
→実際は午前や午後の日射量は下がる。

■内ロールスクリーンは遮熱性のあるものの場合。
(TOSO:トリアスプレーン想定)
→カーテンの種類によって値は異なる。

■エアコン冷房COPや電気代単価によっても値は異なる。

■冷房費は「算出冷房費×1/2」としている。
(曇り、屋根による遮蔽、ガラス面での反射、時間による日射量減を考慮(概算))

※太陽光発電した電気を冷房に使う場合、必要冷房費はさらに小さくなる(自家消費電気単価が買電単価より低いため)。

 

アウターシェードについて手間やコスト等を包括的に検討した僕の感想としては

「南面であればアウターシェードは無しで良い。」
(手間を減らしたい。内カーテンや冷房で十分対応可能)
(コストパフォーマンスを考慮)
(屋根の出や庇を設けることも考慮)

という感想です。

(反対に、直射が当たる窓が多いようであれば設置もあり得る)

 

 

 

 

さて、ここまでは「南面」の場合の話。

西面になると話は変わります。


群馬県前橋の日射量グラフ。

8月の南面日射量と西面日射量はほぼ同量。

 

南と西の時間毎の日射量を見てみる。

拡大図↓

南面の最大日射量約440W/㎡に対して西面の最大日射量は約710W/㎡と約1.6倍。

これは太陽高度の違いによるもの。

南面ピーク時の太陽は高い(=角度が大きい)。
→垂直面(1㎡)にあたる日射量は小さくなる。
(上から日が差す)

対して西面ピーク時の太陽は低い。
→垂直面にあたる日射量は大きくなる。
(横から日が差す)

また太陽高度の差は日射量の差と共に「ガラス面の反射率の差」にもつながる。

窓面への日射角が大きくなると反射率が高まり日射侵入率は下がる。
(概ね60度を超えると大きく反射率が高まる。※ガラスにより異なる)

つまり南日より西日の方が日射熱負荷が大きくなるということ。

 

また西日の特性として

・水平に差し込むため屋根の出や庇で防ぎにくい。

・夏の太陽は高く西日は長時間当たる。

・日射量が急激に増加する→変化(暑さ)に意識がいきやすい。
(グラフの勾配参照)

・水平に差し込むため体や顔に当たりやすい→熱や眩しさによる不快感。
(「小窓であっても暑さを感じる」長倉H様より)

・午後は外気温が上がる→気温上昇と西日のダブルパンチ。

・帰宅して調理など作業をする時間と重なる。

等の特徴があり特に不快感につながりやすい。

(オレンジに色づくことも直感的に西日=暑いと感じさせる要因のひとつ)

 

※直射が当たる窓付近で過ごさなければ概ね問題なし。

※太陽高度が下がってくると日射量も下がる。
(16時頃でピーク時の約70%、17時頃で約40%)
(→西日がキツいのは概ね16-17時頃まで)

※東日との違い。
東日も西日と同様の日射量がある(グラフ参照)。
ただし東日は
・外気温がまだ低い=宅内の室温+壁等周囲温がまだ低い午前中の日
・午前の在宅率は高くない(平日など)
・午前に入った熱は帰宅時までに慣らされる
等から西日より問題視されにくい。
(窓面積が大きい場合は影響考慮必要)

 


〈再掲載〉

西向きで「遮蔽物なし」「窓面積多め」の場合、窓からの日射でかかる冷房費は無視できない額になってくる。

→注意した設計が必要。

 


日射は立体的にとらえる必要がある。

3Dパースや太陽の軌跡が視覚的に分かるアプリ等は設計に非常に役立っている。

 

 

 

【アウターシェード、西日検討まとめ】................

基本的には

〇南面はアウターシェードはマストではない。

「太陽高度が高い(日射量が少ない、反射がある)」「屋根による日射遮蔽可能」なため一般的な窓サイズであれば内カーテン+冷房で対応可能。

〇西面はアウターシェードは有効。

「太陽高度が低い(日射量が多い、反射量が少ない)」「屋根での遮蔽が出来ない」ためアウターシェードによる日射遮蔽は有効。
アウターシェードであれば日射遮蔽しつつ視線の抜けを得ることが出来る。
(視線の抜けが不要であれば内カーテンによる日射遮蔽でも概ね問題なし)

〇西面は必要のない窓は抑えることが効果的。

アウターシェード設置よりも先に窓の要不要の検討を行いたい。
西面は「夏の日射は多く冬の日射は少ない」ため日射熱的には不利。
(東面も概ね同様)

 

※眺望や視線の抜け=広さ感を得る設計であれば考え方は異なる。
(自邸は西向きに大きく窓を開く)
(日射熱を最優先した窓設計ではなく眺望や視線の抜け=居心地を大切にした設計を行いたい)

日射をいたずらに嫌うことなく欠点を抑えながら利点を活かす設計を行いたい。

 

 

 

【秘訣】直射は悪物ではない(夏)。直射の利点『低湿促進、眺望-抜け活用、自然採光の感動。』窓実例紹介。 - 住宅設計エスネルデザイン

 

 

................

暑くなる夏を快適に過ごしたいという思いがある。

窓設計は奥が深い。

『安心-快適-健康(=高性能)』をベースとしつつ

『心地良い居場所』『安らげる暮らし』『労の少ない暮らし』を叶えたい。

今後も検討を深めていきたいと思っています。

 

 

-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-

 

 

 

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