【サーモ】真夏の超高断熱『日向窓と日陰窓、ウッドブラインドとロールスクリーンの温度差。』case.長倉
こんにちは^ ^
夏(春-夏-秋)が年々暑くなってきていますね。
『夏の快適性や冷房費』についてより慎重に設計を行いたいと考えています。
先日、長倉のエスネルでサーモグラフィ測定を行いました。
日向窓と日陰窓の温度差。
ウッドブラインドとロールスクリーンの温度差。
『適切な日射遮蔽設計』とは。
真夏のエスネルの測定結果を紹介します。
長倉のエスネルは長岡市に建つ1階リビングの家。
土間リビング→ウッドデッキ→庭、ワークWIC、雲見室、コーナーサッシ、、
多彩な居場所、居心地を叶えるプラン。
・延床面積=27.0坪(吹抜け含む)
・UA=0.23(G3)、q=57.7
・耐震等級3
・杉板外壁×植栽
これからの時代を見据えた『超高断熱の小さな木の家』です^ ^
【長倉】完成写真たち。『多彩な居場所、居心地。』-豊かな暮らしを愉しめる家- - 住宅設計エスネルデザイン
【サーモ計測の概要】................................
目的:真夏の超高断熱住宅の温度調査
(内外表面温度。日向窓-日陰窓。ウッドブラインド-ロールスクリーン)
調査日:2024.8.20(12:00~12:30)
場所:新潟県長岡市
外気温:31℃程
建物性能:断熱性UA=0.23、q=57.7、気密性C=0.1
サッシ:APW430(日射遮蔽ガラス、ニュートラル、日射熱取得率=0.47)
冷房:家庭用ルームエアコン(6畳用)
気温は31℃程。
測定時の様子(晴れ時々曇り)。
今回の結果は
・猛暑時(35℃超)ではない。
・晴天ではない(雲による日射遮蔽あり)。
などの点に留意。
................
サーモ画像を見て頂く前に「サーモ画像を見るときの注意点」をご確認くださいm(_ _)m
S邸リノベーション。17「サーモグラフィ調査①『注意点』。」 - 住宅設計エスネルデザイン
注意点をまとめると
①表示温度に誤差があること。
②温度差の印象操作が容易にできてしまうこと。
※サーモ計測器は「FLIR ONE(Gen3)」。
精度の誤差は数℃(おそらく±1~3℃程)ある。
→複数のサーモ画像の温度を見比べるより「1枚の画像の中の温度差のありなし」に注目して見ると有意義。
................
説明をもうひとつ。
温度バー(サーモ画像の右端にある温度と表示色の関係を示したバー)の最高温・最低温の設定は変えることが出来る。
これを固定(すべて同じ最高温度~最低温度)すると中間の温度の色が画像毎に変わってしまう(→分かりにくい)。
温度と色をある程度固定できるよう
青(とても涼しい):25℃以下
緑(涼しい):26℃程
橙(普通):27℃程
赤(暑い):30℃以上
と表示されるよう温度バーの最高温度と最低温度を画像毎に調整した。
(→詳細な温度数値を見なくても感覚的に読めるように)
夏の快適な表面温度は概ね26-28℃程。
なので「緑~橙であればOK」と読んでもらえればと思います。
※上記は内部温度について。
(外部温度は分かりやすい別の色を設定)
※アプリの仕様変更により温度色の調整がしにくくなってしまった。
(全自動で温度色が反映されるため)
それにより「黄色で表したいのに青になってしまう」などが起こっている。
=サーモ画像の色の差の印象よりも実際の温度差は大きくない点にご留意頂きたい。
ではサーモ計測結果を紹介します^ ^
【室温】................
外気温が30℃超でも
〇室内は快適温湿度
〇1階-2階-床下がほぼ同じ温湿度(家中で温度差ほぼなし)
等の点がポイント。
(長倉のエスネルでは「低湿冷房」は行われていない)
【冷房状況】................
冷房:2階エアコン(6帖用)のみオン。
設定温度:24℃
運転時間:24h連続
設定風速:自動
それではサーモ測定結果を紹介します^ ^
【外壁(南面)】................
南日向(Sp1):48.8℃
南日影(Sp2):40.1℃
・日向と日陰で外壁温は約9℃差がある。
・屋根の出により2階窓が日射遮蔽されていることがよく分かる。
※ガラス表面温度を正確に測れていない可能性あり。
(反射するため正確に測定できていない。ガラスに映り込む空の温度が影響している可能性あり)
※室内の冷房によるガラス面冷却の影響あり。
(内側遮蔽物により影響の程度に差あり)
等の点に留意。
【南窓】................
南3(Sp1):34.1℃
南1-日影(Sp2):37.7℃
南1-日向(Sp3):42.0℃
・日向と日陰でガラス温(外)は約8℃差がある(Sp3-Sp1)。
・植栽による日射遮蔽によりガラス温度が下がっていることが分かる(Sp3-Sp2)。
(直射光だけでなく反射光の熱も遮っている)
(窓先の景色も良くなるため『グリーンウインドウ』はお勧め)
【秘訣】『グリーンウインドウを造る。』緑の窓辺。-心地良い豊かな暮らし-case.網川原、中野。 - 住宅設計エスネルデザイン
室内へ。
〈リビング(土間)〉................
【リビング】................
南1(Sp1):28.6℃
東1(Sp2):26.3℃
壁(Sp3):25.6℃
床(Sp4):24.5℃
(各温度+1℃程測定誤差がある可能性あり)
・南1窓は直射が当たっているがガラス温(内)は28.6℃とそこまで高くない。
窓付近のソファに座っても不快さはない(暑さはあまり感じない)。
(植栽による外部遮蔽+ウッドブラインドによる放射熱緩和)
・東1窓は測定前(午前)に日射が当たっていた東面。
しかし下屋により窓に直射は当たっておらずガラス温(内)は26.3℃と高くない(暑くない)。
・壁も床も快適温(24-26℃)。
(超高断熱+全館空調の効果)
【リビング上部(吹抜け)】................
南3(Sp1):31.1℃
・「南3(2階-日陰-ロールスクリーン)」は「南1(1階-日向-ウッドブラインド(羽-水平))」に比べて表面温度が高い。
ロールスクリーンはブラインドに比べ窓間の空気を留めやすい。
=熱気がこもりやすい(その分熱損失低減、日射熱反射あり)
ウッドブラインドは羽の隙間により適度に空気が循環する。
=熱気がこもりにくい(=冬場の冷気もこもりにくい=コールドドラフト低減)
サーモ測定前「ウッドブラインドの方が熱がこもりにくく窓辺は快適かも」という想像をしていた。
しかし実際はロールスクリーンでも不快というレベルまでは暑くなっていなかった。
→窓付近の熱環境はロールスクリーンとブラインドで大差なし。
(その他の要点で選択して良い(価格、見た目、機能など))
個人的には
〇日射遮蔽-視線遮蔽(羽-全閉)と眺望-採光確保(羽-水平)の調節が可能。
〇水平時の見た目が涼しげ。
等からウッドブラインドが好み(リビングには)。
(寝室はより遮蔽率が高いロールスクリーンも有効※起床の妨げにならないよう)
〈建主H様の感想〉................
「ロールスクリーンとブラインドで暑さの差は感じていません。」
「ブラインドは光を調整できて景色も見れるので気に入っています。」
【秘訣】『ウッドブラインドのススメ。』風合いの良さと日射調整機能。case.吉岡のエスネル。 - 住宅設計エスネルデザイン
リビング先のウッドデッキ。
特別な半屋外空間としてだけでなく『日射遮蔽装置』としても機能する。
プールや観葉植物が素敵^ ^
【秘訣】『心地良い半屋外空間 case.長倉。』ウッドデッキ、ルーバー、照明、過ごし方。-設計のポイント- - 住宅設計エスネルデザイン
〈キッチン〉................
南2(1階-直射あり-内外遮蔽物なし)。
【キッチン】................
南2(Sp1):33.2℃
・ガラス面が33℃あるとさすがに放射熱で暑く感じる。
ただし夏場に南窓に直射が当たるのは15時頃まで。
夕方の調理時には日陰になる+小窓のため日射遮蔽材はマストではない。
(ケースバイケース。カーテンを設けても良い)
〈建主H様の感想〉................
「キッチン南窓からの日射は特に不快には感じていません。」
「しいて言えばキッチン裏の小窓が夕方少し暑いです(西日)。」
南の日射と異なり西日は
・顔や体に水平に当たる(暑さを感じやすい)
・帰宅して調理等する夕方に当たる
・当たる時間が長い
・垂直に入射するため反射されにくい
等から設計時には特に注意が必要。
西日については追ってまとめたいと思います。
〈2階ホール(吹抜け)〉................
【2階ホール(吹抜け)】................
天井(Sp3):27.0℃
壁(Sp2):26.8℃
床(Sp1):25.9℃(エアコン前のため温度低め)
・体感温度は(室温+周囲温)÷2。
(周囲温=天井-壁-窓-床の温度)
周囲の温度が室温に近い、それぞれの温度にムラがない=快適な冷房空間が叶っている証拠。
(「足元が寒い」「頭が暑い」などがない)
【2階ホール(吹抜け)】................
南4(Sp1):28.3℃
(2階-直射なし-内外遮蔽物なし)
・屋根の出の日射遮蔽により内外に日射遮蔽物がなくともガラス温は高くない。
南2(キッチン窓。直射あり-内外遮蔽物なし)のガラス温は33.2℃ ←暑い。
「窓に直射が当たるかどうか」が窓辺の快適性に直結することが感じられた。
→直射ありなしにより内外日射遮蔽材の要不要を検討。
→屋根-庇-下屋により窓に直射を当てないことが夏を快適に過ごす設計の基本。
(直射が当たる時間、窓サイズ、方位等によりケースバイケース)
【2階ホール(吹抜け)】................
南2(ガラス面)(Sp1):36.0℃
(2階東-測定時まで直射あり(午前))
ロールスクリーン室内側表面温度:約32℃
日射遮蔽物(ロールスクリーン)は
〇日射熱の侵入量を抑えてくれる。
(日射熱を一部反射する)
〇ガラス面からの放射熱を遮ってくれる。
(放射熱を反射-吸収しその残りを放射する)
→窓辺の快適性に寄与する
〇直射が床などに当たり床が熱くなることを防ぐ。
=熱を吸収した床から2次放熱されることを防ぐ。
※ここが重要。いずれまとめたいと思います。
日射遮蔽は内より外で行った方が効果は高い。
(すだれ、アウターシェード等)
しかし外に日射遮蔽物を設置することはコスト(費用-手間)がかかる。
どういった場合に外部遮蔽がより有効なのか。
どういった場合は内部遮蔽で十分なのか。
こちらもいずれまとめたいと思います。
〈その他サーモ紹介〉................
エアコン上部に給気口を設け外気(高温多湿)を即冷房-除湿する。
『エスネル式換気空調設計。』
詳細は以前の記事をご覧ください^ ^
【秘訣】真夏の超高断熱『低湿度を叶える冷房のポイント。』-エスネル式換気空調設計-case.燕仲町 - 住宅設計エスネルデザイン
【秘訣】エスネル式換気空調設計。『換気と空調の経路を揃える。』-シンプルな設計で快適性を得る- - 住宅設計エスネルデザイン
【暮らし】梅雨-夏『結局大事なのは湿度!』子供も大人も快適な住環境を。-燕仲町I様のご感想- - 住宅設計エスネルデザイン
〈外部〉................
【外壁】................
北面(Sp1):35.6℃(直射なし)
東面(Sp2):40.6℃(測定時まで直射あり(午前))
道路(Sp3):51.1℃
※外壁の表面温度は室内表面温度に対してさほど重要ではない。
(外壁の裏には通気層-断熱材があるため外壁表面温度をそのまま室内に伝えるわけではない)
【地面(直射部)】................
下草あり(Sp1):37.3℃
土(Sp2):51.8℃
歩道(Sp3):56.8℃
・下草部分の温度が土や歩道に比べてとても低いことが分かる。
→植栽による照り返し低減効果〇
(植栽の蒸散作用)
※分かりやすいようサーモの色分けを極端にしている。
(植栽により「圧倒的に涼しくなる」わけではないので注意)
【カーポート】................
カーポート内(日陰)(Sp1):31.3℃
コンクリート(日向)(Sp2):38.5℃(日が当たり始めたばかりのため低め)
歩道(Sp4):52.7℃
・カーポートは雨雪だけでなく日射熱も遮ってくれる。
(壁面に設けたルーバーウォールも同様に有効)
【車】................
窓ガラス(外、上向き)(Sp1):50.2℃
ボディ(黄)(Sp2):55.7℃
屋根(黒)(Sp3):64.1℃
・家(南1、垂直面)のガラス面は約42℃だったのに対して車のガラスは約50℃。
(ガラス枚数、反射フィルム、角度等による)
【車】................
窓ガラス(内)(Sp1):55.0℃
シート(Sp2):55.1℃
ハンドル(Sp3):51.3℃
・家(南1、垂直面)のガラス面(内)は約28℃だったのに対して車のガラス(内)は約55℃。
シートなどの周囲も50℃以上。
これが夏の車内が不快な理由。
これで冷房をしても冷房吹き出し温と周囲温の差が大きく不快な冷房環境となる。
(低断熱の家や間欠冷房時の冷房が不快となるメカニズム)
................
年々暑くなる夏。
快適性も冷房費低減も設計をより進化させることはまだまだ出来る。
『疑問を持ち、実状を調査し、設計に反映する。』
そうした姿勢を持ち続けたいと思っています。
-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-
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