【サーモ】夏の日射遮蔽検討『アウターシェード有無、ハニカム-レース-無しの温度差と暑さ体感。』

【日射遮蔽・日射取得】の秘訣

こんにちは^ ^

夏(春-夏-秋)が年々暑くなってきていますね。

『夏の快適性-日射遮蔽の効果』についてより慎重に設計を行いたいと考えています。

先日、ある住宅のサーモグラフィ測定を行いました。

アウターシェードの有無、ハニカムスクリーン-レース-無しの温度差と暑さ体感。

『適切な日射遮蔽設計』とは。

真夏の窓の測定結果を紹介します。

 

 

 

年々暑くなる夏。

それと共に「適切な日射遮蔽設計」に意識が向いています。

具体的には、窓内外の日射遮蔽材の効果と手間、採用不採用の検討について。

その検討のためのサーモ測定を行いました。

測定させて頂いたのは断熱気密も日射遮蔽-取得も冷暖房設計もトップクラスの性能を持った住宅です。

(許可は頂いていますが他社様の住宅のため情報は伏せます)
(Tさん、ご協力大変ありがとうございました)

 

【サーモ計測の概要】................................

目的:アウターシェードの有無、ハニカムスクリーン-レース-無しの温度差の調査

調査日:2024.8.24(10:30~13:00)

場所:新潟県

外気温:32℃程

建物性能:断熱性UA=0.16、気密性C=0.1程

サッシ:高断熱サッシ(Uw=0.75、日射取得ガラス、日射熱取得率=0.59)

室温:25-26℃、58%程(全館冷房。エアコン設定温度25.5℃)

※ハニカムスクリーン、レースカーテンの日射熱取得率は不明。

 


気温は32℃程。


測定時の様子(晴れ時々曇り)。

今回の結果は
・猛暑時(35℃超)ではない。
・晴天ではない(雲による日射遮蔽あり)。
・日射取得ガラス(日射熱取得率=0.59)。
などの点に留意。

 

................

 

サーモ画像を見て頂く前に「サーモ画像を見るときの注意点」をご確認くださいm(_ _)m

 

S邸リノベーション。17「サーモグラフィ調査①『注意点』。」 - 住宅設計エスネルデザイン

 

注意点をまとめると

①表示温度に誤差があること。

②温度差の印象操作が容易にできてしまうこと。

※サーモ計測器は「FLIR ONE(Gen3)」。
精度の誤差は数℃(おそらく±1~3℃程)ある。
→複数のサーモ画像の温度を見比べるより「1枚の画像の中の温度差のありなし」に注目して見ると有意義。

 

................

説明をもうひとつ。

温度バー(サーモ画像の右端にある温度と表示色の関係を示したバー)の最高温・最低温の設定は変えることが出来る。

これを固定(すべて同じ最高温度~最低温度)すると中間の温度の色が画像毎に変わってしまう(→分かりにくい)。

温度と色をある程度固定できるよう

青(とても涼しい):25℃以下

緑(涼しい):27℃程

橙(普通):28℃程

赤(暑い):30℃以上

と表示されるよう温度バーの最高温度と最低温度を画像毎に調整した。
(→詳細な温度数値を見なくても感覚的に読めるように)

 

夏の快適な表面温度は概ね26-28℃程。

なので「~橙であればOK」と読んでもらえればと思います。

※上記は内部温度について。
(外部温度は分かりやすい別の色を設定)

※アプリの仕様変更により温度色の調整がしにくくなってしまった。
(全自動で温度色が反映されるため)
それにより「黄色で表したいのに青になってしまう」などが起こっている。
=サーモ画像の色の差の印象よりも実際の温度差は大きくない点にご留意頂きたい。

 

 

ではサーモ測定結果を紹介します^ ^


〈10:30(実験前)〉

【外壁(南面)】................
日向(Sp4):46.0℃
日影(Sp3):40.3℃
【アウターシェード(南面)】................
日向(Sp2):48.9℃
日影(Sp1):46.0℃

夏は上記のようにアウターシェードをすべて閉じて暮らされている。

 

 

ここから実験スタート♪

各窓の内外の日射遮蔽材を変えそれぞれの表面温度を測定し各日射遮蔽材の効果を把握する。


【概要】................
・外壁方位:ほぼ真南(真南から10度西向き)
・軒の出:94cm程(屋根先~ガラス面)
・窓:総幅8.2m程、高さ1.9m程
・窓下高さ=屋根先高さ-2.1m程

 


ガラス面への直射量は高さ8cm程。
(軒の出94cm程。8/24.10:30)
(アウターシェードの影がガラス面の影より少ないのはガラス面より手前にあるため)

 

【窓内部】................


【窓1(外:なし/内:なし)】


左【窓2(外:なし/内:レース)】
右【窓3(外:アウターシェード/内:レース)】


左【窓4(外:アウターシェード/内:ハニカムスクリーン)】
右【窓5(外:なし/内:ハニカムスクリーン)】

※サーモ結果だけでなく各日射遮蔽材の有無による「視線の抜け」「採光」の違いも考慮して検討すると有意義。

 

【10:30(実験開始直後)】................


ガラス面(外)の温度は40~44℃程。
アウターシェードの温度は50~53℃程。

※ガラス表面温度を正確に測れていない可能性あり。
(反射するため正確に測定できていない。ガラスに映り込む空の温度が影響している可能性あり)

※室内の冷房によるガラス面冷却の影響あり。
(内側遮蔽物により影響の程度に差あり)
等の点に留意。

 


【窓1(外:なし/内:なし)】
ガラス面(内、日陰。Sp2):28.2℃

直前までアウターシェードにより日射遮蔽されていたためガラス面(内)の温度は高くない(周囲温+2℃程)。

【体感感想(窓から1m以内)】................
・ガラス面に近づいても暑くない。不快感なし(他窓も同様)。

 


【窓2(外:なし/内:レース)左】
【窓3(外:アウターシェード/内:レース)右】
レース面(内、日陰。Sp2):26.5℃

直前までアウターシェードにより日射遮蔽されていたため両者に差はない。

レース面(内)の温度=周囲温+1℃程。

 


【窓4(外:アウターシェード/内:ハニカムスクリーン)左】
【窓5(外:なし/内:ハニカムスクリーン)右】
ハニカム面(内、日陰。Sp2):27.2℃

直前までアウターシェードにより日射遮蔽されていたため、両者に差はない。

ハニカムスクリーン面(内)の温度=周囲温+1℃程。

ガラス面からの放射熱もほぼ感じず快適。

※形式上画像はオレンジになっているが室内は暑くなく涼しい。
(周囲温が高くないこと、室温25~26℃、湿度58%程であること等による)
(以下の他の画像も同様)

〈参考〉................

【北窓(外:なし(網戸あり)/内:なし】
ガラス面(内、日陰。Sp2):26.6℃

北面の窓からは暑さは感じない。

 

ここからがこの実験の本番^ ^

【13:00(2.5h経過)】................


ガラス面への直射量は高さ73cm程。
(軒の出94cm程。8/24.13:00)
(屋根先高さ-164cm程下まで日陰)

 


夏(8月下旬)の日差しは夏至(6/21程)よりも高度が低いため南面の直射量が増える。

その点を考慮した日射遮蔽設計が求められる。

 


窓(外)の温度。

 


【窓1(外:なし/内:なし)】
ガラス面(内、日陰。Sp2):31.9℃
ガラス面(内、日向。Sp3):34.1℃

アウターシェード遮蔽+日陰だった10:30からガラス面(日向)は+6℃上昇。

【体感感想(窓から1m以内)】................
・34℃は暑くて不快。じわじわ汗が出る(室温は26℃であっても)。
・ハロゲンヒーターのように窓や床からの放射熱をジワジワ感じる(直射が当たっていない場所にいても)。
・ハロゲンヒーターのように「顔側は暑い、背中側は涼しい」と温度差を感じ不快。
・窓から離れると上記の不快さは軽減される(放射熱の影響が減る。放射熱は距離の2乗に反比例)。

→直射の当たる窓+日射遮蔽材なしの窓付近は暑くて不快に感じやすい。
(=窓辺に居場所を設ける場合に注意)
(窓辺から離れれば影響は減る)

 


【直射を受けた床】
床(Sp1):37.3

この画像に『夏の日射遮蔽(暑く感じさせないため)の秘訣』が詰まっている。
ガラス面よりも実はこちらが問題。

詳細はまた別にまとめます。

 


【窓2(外:なし/内:レース)左】
レース面(内、日陰。Sp2):30.4℃
レース面(内、日向。Sp3):30.7℃
【窓3(外:アウターシェード/内:レース)右】
レース面(内、日陰。Sp4):29.1℃
レース面(内、日陰。Sp2):28.5℃
(日陰-日向の差が大きくない理由はレース裏の熱が上昇しているためと思われる)

アウターシェードの有無で温度に差が出ている。
(温度差=1.5~2℃程)

【体感感想(窓から1m以内)】................
〈窓2(外:なし/内:レース)〉
・ガラスとカーテン、カウンターからの放射熱を感じる。暑い。
・レースなし(窓1)よりは暑くない(放射熱少ない)
〈窓3(外:アウターシェード/内:レース)〉
・放射熱をほぼ感じない(暑くない)。壁と同様に感じる。

体感ではアウターシェード有無の温度差(1.5~2℃程)以上に暑さの差を感じた。

※測定結果は「レース表面温度」だがは実際にはガラス面からの放射熱の影響もあると想像。
※レースの表面温度は冷房の影響を受けているため実際の温度より低く測定されている可能性あり。

直射の当たる窓は
〇アウターシェードにより放射熱が抑えられ窓付近の暑さを抑えられる。
(窓付近の体感温度低減に十分な効果あり)
〇外遮蔽なし+レースカーテンでは日射遮蔽としては不足感あり。
(窓付近にいる場合)
(「窓から離れた場所+冷房が循環している」場合は概ね許容範囲内)

 


【窓4(外:アウターシェード/内:ハニカムスクリーン)左】
ハニカム面(内、日陰。Sp2):28.5℃
ハニカム面(内、日向。Sp3):28.1℃
【窓5(外:なし/内:ハニカムスクリーン)右】
ハニカム面(内、日陰。Sp4):30.4℃
ハニカム面(内、日向。Sp5):31.0℃
(日陰-日向の差が大きくない理由はハニカム裏の熱が上昇しているためと思われる)

アウターシェードのありなしで温度に差が出ている。
(温度差=2~3℃程)
(画像の色の印象の差ほど温度差は大きくない点に注意)

【体感感想(窓から1m以内)】................
〈窓4(外:アウターシェード/内:ハニカム)〉
・放射熱をほぼ感じない(暑くない)。壁と同様に感じる。
〈窓5(外:なし/内:ハニカム)〉
・窓3や窓4(アウターシェードあり)に比べると少し暑さを感じるが問題ない範囲内。

サーモ測定結果を見ると
「ハニカムスクリーンとレースの温度差=ほぼ無し」だが、ハニカムスクリーンの効果は多少なりともあると感じた(大きくはない)。
(熱損失低減効果はまた別にある)

 

【実験結果まとめ】................

■アウターシェードは直射の当たる窓付近の放射熱を抑えてくれる。
(体感で十分な効果を感じるほど)
※直射の当たらない窓の場合パフォーマンスは下がる。
※日射熱が入りやすい窓(日射熱取得率が高いガラス)の場合パフォーマンスは上がる(冬の日射熱取得を重視した住宅、窓性能の低い既存住宅への設置など)。
※窓付近を離れると効果の体感具合は低減する。

■レースとハニカムスクリーンの放射熱低減の差は大きくはない。
(熱損失低減効果はまた別にある)

■カーテン類の有無による暑さの体感差はある。
(床など周囲からの二次放射による暑さ)

 

 

 

 

................

今回の実験でアウターシェードにより直射の当たる窓付近の快適性が向上することが感じられた。

夏の日射熱を抑えるのにアウターシェードは効果的。

では全ての窓にアウターシェードを付ければ良いのか。

どのような場合により有効で、どのような場合はそうではないのか。

採用不採用の判断には「使い勝手(使用時、メンテ時)」「コストパフォーマンス」「設計的工夫による代替解決は可能か」などが関わってくる。

包括的検討は非常に複雑で難解。

しかし「これからさらに暑くなる夏をいかに快適に、楽に過ごせるか」に対して応えていきたい。

追ってまとめたいと思っています。

 

 

-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-

 

 

 

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