【秘訣】熱交換換気扇を採用していない理由。『換気の質の担保。リターンとリスク。』-換気の目的-

【冷暖房・空調・換気】の秘訣

ゆうです。

熱交換換気扇について。

エスネルでは熱交換換気扇を採用していません。

その理由をまとめました。

 

 

 

【事前注意】................

・今回の記事は『これからエスネルを建てられる方、検討中の方』に向けたものになります。
(熱交換換気扇のメリデメ質問に対する回答)
(エスネルデザインが熱交換換気扇を標準採用していない理由のお伝え)

※建築業者さん、すでに家を建てられた方は読まないでください。
(熱交換換気についての懸念事項が出ます。お気を悪くされないように)
(気を悪くされた方がいれば申し訳ありません)

・現時点での話になります。
(今後、設備の進化や社会の変化によって考えは変わる可能性があります)

・あくまで僕個人の考え、感想です。
(なにを優先するかによってベストな選択は変わります)

・ケースバイケースで熱交換換気扇を採用します。
(建て主様からのご要望、有効なエリアに建つ場合、懸念事項の対策が取れている場合)

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建築業者さん、すでに家を建てられた方は閉じましたね?

 

 

 

 

 

 

 

読まれているのは「これからエスネルを建てられる方、検討中の方」だけですね?

 

 

 

 

 

 

 

 

では、熱交換換気扇について本音を語りたいと思います。

(主にダクト式全熱交換換気扇について)

 

 

 

 

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設計において『換気』設計は特に注意が必要。

シックハウス症候群を忘れてはならない。

 

換気の目的とは。

それは『汚れた空気を綺麗な空気に入れ替える』こと。(Aとする)

人から発生する匂い、湿気、CO2、ウイルス。

家具や建材から発生するVOC。

それらを外の新鮮な空気と入れ替える。

そして換気にはその他に

『空調した熱を有効活用する。宅内の温湿度を保つ。』(Bとする)
(熱交換→快適性、経済性、環境負荷低減に寄与)

というテーマもある。

 

近年、AとBが同列で語られているケースが少なくない。

むしろ「AよりもBをメインに換気扇が選定される」ケースも。

Bは言うなれば「換気」ではなく「空調」の分野の話。

空調設計で解決できるならば分けて考えることが望ましい。

「Bを優先するあまりAの質が下がる」なんてことはあってはならない。

優先順位は「A>>>>>>>>>>>>B」。

換気はなにか問題があった際に違和感を感じにくい。

食べ物であれば匂い、色、味で問題があることに気付ける。

しかし、空気は見えない。味を感じない。

アレルギーやシックハウスになってから気付く。

そこから症状を直すのは容易ではない。

 

 

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また近年、設備は多機能を複合する傾向にあるが、そこにはリスクやコストがかかることを再認識する。

効果、リスク、コスト等を考慮すれば「換気」と「空調」は基本的には分けて考えたい。

 

 

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エスネルが熱交換換気扇を採用していない一番の理由は

『将来に渡り、換気の質(安全)が脅かされるリスクを抑えるため。』

適切な換気が、単純な仕組みで、手間の少ない維持管理で行われるように。

 

また、熱交換換気扇がなくても快適性に問題がないような換気空調設計を、

そして、冷暖房費が抑えられるよう高断熱で小さな家を検討し提案している。

 

 

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自分が建て主側になったとして

熱交換換気扇に対して浮かぶ率直な疑問。

・本当にそこまで効果あるの?
(経済性、快適性)

・熱交換素子の交換を忘れそう。
(交換しないとその後の空気はどうなるの?)

・熱交換素子の交換が面倒、交換が必要か見ても判断できないからタイミングが難しい。
(交換する価値を体感しにくいものでなおかつ高額なものの交換はストレス)

・その熱交換素子やモーター等は10年後も供給してくれるの?
(なにかが壊れたら「交換部品がもうないのでまるごと交換してください」って言わない?)

・ダクトに埃って本当に溜まらないの?
(目視点検できないから心配)

・湿気も交換するって本当に問題ないの?
(熱交換素子の結露は?凍害は?カビは本当に生えない?)

・問題が起こっても気づけないのが怖い。リスクは取りたくない。
(健康被害のリスクを考えると万が一にもそれは避けたい)
(子供のアトピー、アレルギー)

 

上記の疑問はどんなに検討しても解決されない。

未来は誰にも分からないから。
(設備仕様、施工条件、運用条件、環境条件等により結果は様々)

 

僕はアレルギー持ちで子供もアレルギー、アトピー持ち。

どれだけ経済性や快適性に効果があったとしても、健康への懸念があるものは僕は採用したくない。

(適切に運用できる方、交換支出に問題がない方で、適切な設備選定と施工が叶えられるなら採用可)

 

 

 

 

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上記の疑問を検討しました。

 

【経済性】................

熱交換換気扇を採用すると

ざっくり年間1.5~2万円ほど冷暖房費を低減できる。
(一般的な家で。条件記載は省略)

対してトータルコストは50万円以上(ケースバイケース)。
(イニシャル、ランニング、メンテナンスコスト)
(素子やダクトの抵抗により消費電力は高め。または消費電力が小さいものはイニシャルが高め)
(素子は3~5万円程。5~10年で交換)

コスト回収には30年前後か。
(一般的な換気扇のメーカー設定標準使用期間は15年程)

→経済的メリットを目的に熱交換換気扇を採用することは妥当ではない。

 

 

 

【快適性】................

特に全熱交換換気扇のメリットは『湿度を安定させられる』こと。

冬場は換気で捨てる湿気の一部を室内に戻してくれる。

夏場は換気で入る湿気の一部を外に戻してくれる。

これは価値がある。

しかし

・エアコンの除湿や加湿器で代替可能。
(上記の懸念を抱えてまで換気扇で除加湿するか)

・「浴室の湿気」「洗濯物の湿気」「換気量を抑える」等で加湿補助も可能。

・春や秋などの空調しない時期は熱交換の効果はない。

 

 

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【環境負荷低減】................

効果はある。(程度は経済性と同様)

しかし、懸念を抱えてまですることかと言われれば他の行動で環境負荷低減に貢献したい。

熱交換ではなく「換気量を必要量に抑える(ロスを減らす)」という貢献方法もあり得る。

熱交換換気扇にかけるコストを断熱性や太陽光にまわしたほうが効果的かとも思う。

 

 

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そもそも、カタログの交換効率は現実には実現されない(場合が多い)。

自動車のカタログ燃費と実燃費が異なるように。

換気風量が大きくなれば熱交換効率は下がる。
(熱交換素子内で給排気が触れ合う時間が短くなる)

換気風量を抑えれば熱交換する空気全体量は減る。
(熱交換換気扇の意義が薄まる)

 

 

 

 

................

 

僕は何度か

「環境負荷低減のために(たとえ非経済的であっても)熱交換換気扇を採用しようか。」

と検討したことがあります。

しかし正直、建て主様に自信を持って勧められる根拠は揃えられませんでした。

また熱交換換気扇を採用した家の「素子が適切に交換されていない実情」の報告を聞くことがあります。

プロである僕でも交換を疎かにしてしまいそう。

「建て主様にどれだけの理解と手間と支出をお願いできるものか。」

カタログやセールストークは綺麗だが

現実は、効果もメンテナンスも綺麗にはいかない(場合が多い)。

それらを考慮した上で現実的な設計(設備選定)を行いたいと考えています。

 

また将来、換気扇は『フルオートデマンド換気扇(各室設置)』が主流になると考えています。

そうなった際に入れ替えがしやすいよう配慮しておきたい。

住宅は室毎に滞在する人数やタイミングの偏りが大きい。
(団らん時は大勢でリビング、就寝時は一人で個室)

各室でデマンドで換気量を調整することは理に適っていると考えています。

 

【秘訣】換気扇の未来『フルオートデマンド換気扇の各室設置。』壁付換気扇を採用する理由。-未来を見据えた設計を- - 住宅設計エスネルデザイン

 

 

熱交換換気扇は『公共施設や商業施設(非住宅)には好ましい』と考えています。

・容積が大きく必要換気量が多い(捨てる熱が多い)。
→熱交換換気扇で得られる効果が大きい。

・定期的に適切なメンテナンスが行われる。
(熱交換素子、ダクト内清掃。専門家による管理)
→空気質(安全)の担保。

・利用者が長期滞在しない。
(利用者への影響が小さい)

 

 

 

 

 

【熱交換換気扇について設計者が思うこと】................

・メンテナンスを考慮した本体位置、ダクト配管の設計が難しい。
(あっちを立てればこっちが立たず)
(室内にダクトスぺースが出っ張る、天井に配管のための空間が必要になる)

・そもそも小さい家は必要換気量が少ないので熱交換換気扇から得られるメリットは小さくなる。
(必要換気量が多いほど熱交換するメリットは大きくなる)

・外気を直接寝室に入れる換気方式の場合、熱交換してから入れたくなる気持ちは分かる。
(→換気経路の工夫で解決したい。)

・海外と日本では環境が異なる。その点を考慮しているか。
(湿度、気温、メンテナンスの習慣、、)
(年間の湿度が低く素子がカビるリスクがほぼない地域ならば採用障壁は小さくなる)

・換気は『断熱や耐震よりも重要』。
住宅は高気密化しているが換気は複雑化、または考えられていない。
→換気問題による健康被害が今後露見してくる可能性、

・換気に関して、もう社会問題を起こしたくない。

 

 

 

【様々な熱交換換気扇について思うこと】................

・床下に給気するタイプがあるが床下を空調経路として使うことに問題はないだろうか。
(床下は清掃する?湿度の高い時期はカビにつながらない?)
(高基礎であってもこの方式は躊躇する)

・排気口を床に設置する場合、フィルターの清掃頻度は重要になるだろう。
(ホコリで詰まると換気不足に)
(排気口の床設置はダクト設計が楽なのだが)

・壁付け同時給排タイプは消費電力が高め。熱交換効率が高くない。本体が出っ張る。ショートサーキット懸念。素子の安全性懸念、、

・個室給気タイプは個室が外気温の影響を受けやすくなる。
(熱交換されているとは言え、冷めたい(暑い)空気が入ってくる)
(壁付け同時給排タイプも同様)
→個室毎にエアコンを設置した方が良いのか。

、、、

どれも一長一短。

→数年検討した結果『設備はシンプルで単純なものが良い』に落ち着いた。

 

 

【message】『素直な設計を。』-理に適った自然体の設計- - 住宅設計エスネルデザイン

 

 

【エスネルが熱交換換気扇を採用するケース(条件)】................

〈建て主様〉

・建主様にシステムの理解がある。

・熱交換素子等の管理交換が出来る。

・上記懸念をお伝えした上での判断。

・立地条件的に熱交換換気扇のメリットがある。

・環境負荷を出来る限り減らしたい。

・ダクトスペース分、家が大きくなっても構わない。

〈選定設備〉

・熱交換素子は交換可能か。
(プロではなく住まい手で可能か)

・モーター等消耗品は交換可能か。
(プロではなく住まい手で可能か)

・ダクトの径は100φ以上か。
(ダクトはスパイラルダクトだと好ましい)
(施工は大変でコストは余計にかかるが圧損やホコリ溜まりリスクを抑えられる)

 

 

【秘訣】「熱交換型換気扇」採用の注意点。熱交換素子の比較。 - 住宅設計エスネルデザイン

 

 

................

最後に。

様々な換気扇があるが換気扇自体に善悪はない。

重要なのは

『設計者の想定、説明。』

『使用者の理解、適切な維持管理。』

 

設計者の想定、説明を尽くしたい。

しかし運用や環境は様々なため「想定し切ることは出来ない。」

そうであればリスクを抑えた設計を心掛けたい。

耐震も、断熱も、空調も、換気も。

押さえるべき点を押さえる。

 

換気空調設計、設備選定。

『自分の家であれば採用するかどうか。』

常に自分に問いかける。

メリハリのある設計を行っていきたい。

 

 

-「超高断熱の小さな木の家」escnel design-

 

 

 

 

 

 

【裏話】................

以前、住宅の断熱性は「Q値」という指標だった。
(今はUA値に変わった)

Q値は熱交換換気扇を採用すると数値が良くなった。
(熱ロスを減らせるから)

昔から高断熱住宅を推している会社の熱交換換気扇の採用率が高いのはQ値の評価方法の影響もあると思われる。
(「Q値を良くしたい」という思い)

UA値に変わり「断熱指標の良し悪しに設備の種類が影響しなくなった」のはとても健全なことと感じている。

Q値と同様の評価方法であればエスネルでも「数値を良くするために熱交換換気扇を採用するか」という発想になっていたかもしれない。

指標の弊害。

性能を追いつつも、指標に捉われない設計を心掛けたい。

 

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